美術科教育学会 乳・幼児造形研究部会では、日ごろの研究の成果を基に協議を重ね、乳・幼児期の造形について、保育者や小学校以上の教員、養成校の教員はもちろん、子育て中の保護者、子どもを取り巻く地域の人々にも広く理解を共有していただき、みんなで子どもたちの幸せな育ちを支えてもらうことを考えました。
そこで、乳・幼児造形研究部会では、「自己をつくり、人と関わり、世界を広げる」3つの観点を基に、乳・幼児期の造形について、子どもの姿、育む可能性、役割などについて、「気づかせてくれる10のこと」として以下にまとめました。今後も以下の文章を追加、修正などして更新していく予定です。
乳・幼児造形研究部会
乳・幼児の造形が気づかせてくれる10のこと
1)乳・幼児は、道に落ちている石ころ、土や砂からお菓子の空き箱や画用紙など、自然や人工の多様な材料や素材との関わり、じっくりと試したり確認したりする。
2)乳・幼児は、彼らを取り巻く多様な環境や、身近にある材料素材との関わりを通して、感じる力(感性)を育んでいる。
3)乳・幼児は、物と関わる遊びを通して、例えば、きらきら光るビーズの破片やつるつるした石ころ、ふかふかの土、様々な色や形の草花、きれいな紙などに、自分から気づいて手を伸ばしていくことで、物との関わり方や扱い方、情動、関わっていこうとする主体性を育んでいる。
4)乳・幼児は、自分のペースで繰り返す遊びの過程で、様々な発見をしたり、思いに合うようにする方法を探ったりする。こうした物と関わる遊びを通して、自分なりに問題を解決する力を育んでいる。そして、自分なりの解決方法や答えなどの選択肢を多く持てるようになることで、人生における質的によりよい判断ができるようになっていく。
5)乳・幼児は、そうした関わりの過程で、その乳・幼児なりの、よりよい遊び方を見つけたり思いついたり、見立て・想像し、発想し構想していく連続する遊びを通して、想像する力を創造する力へつないでいる。
6)乳・幼児は、自らを取り巻く世界にある心動かされる環境や事象に出会って、「自分」をみつけ、つくっている。
7)乳・幼児の「ことば」は、発話のみならず、人や物との関わりから生まれ育まれる感覚や感性を基に、表情や動き、リズムや歌、イメージ・・・等、様々な方法で表現される。造形活動は、言葉によらない思考を育てると共に、子どもの発話を誘発する。
8)乳・幼児は、大人や友達に認められ、子ども同士で認め合うことで、安心して表現しようとするようになる。大人は、乳・幼児たち一人一人の「感じる」心持ちに寄り添うことで、乳・幼児の思いを知る。
9)乳・幼児は、遊びの過程で多様な材料や素材と関わり、つくったり・かいたりすることを通して、周囲の物や人などの環境世界を自分の中に取り込む。そして、世界をよりよくなるように変えていくことで、自己と世界との関わり方を学んでいる。乳・幼児は、自分と世界との関りを少しずつ広げている。造形は、自己と世界の橋渡しをしてくれる。
10)乳・幼児は、様々な表現に出会う過程で、世界は多様で素晴らしいことを理解していく。乳・幼児の身近にいる友達や大人はその出会いを与えてくれる。そして、世界を理解する。
制作2019年度 美術科教育学会 乳・幼児造形研究部会
(代表:塩見知利 事務局:丁子かおる、宮野周 顧問:平田智久 他:部員)
(※ご意見ご感想など、ありましたら上記の委員または、学会e-mailまでお願いします。)
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